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ドアを開けたのは、手に荷物を持った年嵩の女性だった。地味な色のドレスにエプロンを着け、頭には白い頭巾を被っている。<br><br> 女性はロゼに気づくと、訝しげな顔をした。<br><br><br><br>「そんなところで……誰だい? なんか用事かい?」<br><br>「あの、こちらはアズム様のお宅で間違いないですか?」<br><br>「そうだよ」<br><br>「こんにちは。今日からこちらでお世話になることになった――」<br><br> ロゼが最後まで言い終える前に、女性は大きく頷いた。<br><br><br><br>「なんだ! ちょっとお前さん、遅かったじゃないか!」<br><br> 威勢よく怒鳴られて、ロゼは面食らった。<br><br><br><br> 口調ほど怒っている風では無いが、手放しで歓迎している様子でも無い。女性は大きな身振りで「こっちへおいで!」と手招きをする。<br><br> ロゼはピッと背筋を伸ばすと、早足で女性の元に駆ける。<br><br><br><br>「全く、初っぱなから遅刻するなんて。うちの旦那様が寛大なことに感謝するんだね」<br><br> 早く来たつもりだったので、まさか遅れているとなじられるとは思わずに、ロゼはびっくりする。<br><br> 女性はロゼの様子に気づいていないようで、庭にある木箱に、手に持っていた生ゴミを入れながら話を続けている。<br><br><br><br>「私の名前はターラ。ターラさんとお呼び」<br><br>「ターラさん」<br><br>「全く、こんなちんちくりんだなんて聞いてなかったよ。それに、どこもかしこも薄汚れてるじゃないか! 早くしな。こっちだよ」<br><br> ロゼは急かされるままに、そそくさとターラの後に続いた。<br><br><br><br> 屋敷の中に入ると、すぐに台所だった。清潔な水場や、いくつもの調理器具が置かれたテーブル、そして大きな調理用の石窯がデンと構えている。<br><br><br><br> 何より一番とっても大事なのは、ふわんと甘い、いい匂いが充満していることだ。<br><br><br><br> すんすん、と鼻を動かして匂いを嗅いでいると、先に食堂から出ていたターラが、戸口からこちらを振り返っている。<br><br><br><br>「こっちだよ」<br><br>「はい」<br><br> 甘い香りでロゼを誘惑する林檎のコンポートに別れを告げると、従順にターラの背を追った。<br><br><br><br> 外から見てもわかっていたことだが、中も驚くほどに大きかった。ターラについて廊下の端を歩きながら、ロゼは目をまん丸にして眺めた。<br><br> そこかしこに作られた窓から差し込む陽の光が、屋敷を満たす。屋敷の中は、品のいい調度品で揃えられていた。<br><br> てっきり、真っ白い漆喰が塗り固められているだけだと思っていた天井には、芸術的な模様が彫り込まれている。<br><br> ぽかーんと口を開いて天井を見上げていたロゼを、ターラが手招きする。<br><br> 飴色に光るほど磨き上げられた階段を上りながら、極々潜められた声で話しかけてきた。<br><br><br><br>「名前はなんだったかね、モレ?」<br><br>「ロゼです」<br><br> 了承の意を示すようにターラが小さく頷く。<br><br><br><br> ――もしかして、使用人として住み込むことになるのだろうか。<br><br><br><br> 夜だけ屋敷に住ませてくれと頼んだのを、そういう風に受け止められたのかも知れない。<br><br><br><br> それならそれで頑張るしかないな、とターラの白髪交じりな後ろ髪を見つめ、ぼんやりと思う
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